一期生のなかで一番年上で、
踊りの経験もある恵美子さんは先生たちの助手役で、
一期生と先生たちの橋渡し役でもあった。
レッスンは基礎のクラシックバレエを終えると、民族舞踊に入った。
「バレエはできるかもしれないけれど、フラダンスは同じだもの」。
恵美子さんはほかの一期生たちにそう言われた。
スタートラインが同じだから、みんなの競争心が強かった。
午前4時、カタカタカタカタという音で、恵美子さんは目が覚めた。
床に毛布を敷いて、音が出ないようにしながらフラメンコの練習をしている姿があった。
寝静まった夜、復習に汗を流す人もいた。
みんな隠れて黙々と練習し、何もなかったように涼しい顔をした。
それだけ、懸命だった。
恵美子さんが橋渡し役として心がけたことが2つある。
だれよりも早く、踊りをマスターすることと、
引っ張っていく力を持つためにできない人の手助けをすること。
先生たちには
「上に立つ人は孤独になりなさい」
と言われた。
毎日、レッスン場でも寮でも同じ顔ぶれで、みんないらいらしていた。
恵美子さんはこころから話せる人が欲しかった。

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