昨年の春だった。
常磐音楽舞踊学院教授で、
エミ・バレエスクールなどを主宰している小野恵美子さん(64)は、
朝日新聞の取材を受けた。
福島県版の「あの人に伝えたい」という欄の取材で、
踊りのこころを教えてくれた舞踊家の香取希代子さんへの思いを語った。
その2年前、常磐ハワイアンセンターを舞台にした映画「フラガール」が全国の映画館で上映され、
松雪泰子が演じたまどか先生のモデルのカレイナニ早川さんと、
蒼井優の紀美子のモデルだった恵美子さんの師弟関係が脚光を浴びた。
しかし、恵美子さんたち常磐音楽舞踊学院一期生にはもう1人、大切に思う踊りの先生がいた。
それが香取さんだった。
恵美子さんにとって、ダンサーとしての育ての親が早川さんなら、香取さんは生みの親。
いつからか、もう1人のまどか先生の存在も伝えたい、と思うようになった。
わたしと教え子たちで来春、創作フラメンコを上演します。
もう一人の『フラ(メンコ)ガール』がテーマで、香取先生が主人公です。
先生役はわたし。あの独特の抑揚のある話し方も、せりふに入れます。よく似ていると思っています。
恵美子さんは胸に秘めていたことを、朝日新聞の記者に明言した。
来春とは、自身の舞踊45周年の記念公演を意味する。
恵美子さんは自分で自分の背中を押した。

もう一人のまどか先生1