<客と喜びや感動を共有する>
フラガールたちは福島を勇気づける 震災以降、下降線をたどっていたスパリゾートハワイアンズの来場者数は、V字回復した。
上期休業を余儀なくされた震災の年には、日帰り来場者約37万人(宿泊者数約8万5,000人)と深刻な落ち込みだったが、
2013年の実績で、日帰りの来場者数は、約150万人、宿泊者数は約45万9,000人が訪れた。
この数字は、日帰り約148万人、宿泊者数36万8,000人だった2010年の実績を上回った。
 業績がV字回復した要因の一つに、行動指針の浸透がある。
2011年11月に再開した際、顧客満足度を高めるための行動指針CREDO(信条、志、約束の意味)を作った。
すべての人と喜びや感動を共有し、“ワクワク”する楽園を目指すというビジョンを掲げ、従業員全員に、少しずつこの行動指針が浸透していった。
「このサービスや企画でお客様が、ワクワクするかな?」ということを第一に考え、これが社内の共通語となっていった。
社員全員がCREDOを共有することによって、仕事に好循環が生まれた。
 サービス業という業種上、客に接する従業員の教育にはとくに気を遣っている。
 従業員の教育の現場では、「こういう言い方をしたらどう?」「今の言い方でお客様は、ワクワクするだろうか?」
「その言い方よりも、こっちの言い方の方がいいよね」と、現状を少しずつ、少しずつ、改善していくことに力を入れた。
 下山田敏博業務改革室長は、「お客様にワクワク感を届けるという社内の共通語が少しずつ浸透して、進化していった。
上手にレベルアップできたと思う。震災後、多くの人に助けてもらい、つながりができた。
そのことをこれからも忘れてはいけない。少しずつでも質、レベルを上げ、これを継続していく」と語る。
震災を乗り越え、スタッフ同士の団結、絆も強くなっている。

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<復興の福島全体への広がりへ>
広野町の有志から感謝の意を込めて桜が贈られた 来場客数は、震災前を上回り、場内も活気であふれている。
この上昇気流が、スパリゾートハワイアンズから、福島全体に広がることを目論んでいる。
 下山田室長は、「ハワイアンズだけがよくなってもダメ。
ここから、福島全体、東北に波及させることができないかと考えている。
会社そのもののピンチから、さまざまな方の支援で、立ち上がることができた。
広野町の方々との絆もできた。
これからも、感謝の気持ちを忘れないということをずっと言い続ける」と、
地元との結びつきを大切にしながら、東北全体の復興に目を向ける。
 12年の5月には、避難していた広野町の有志たちから、桜の木が贈られた。湯本の町で話を聞いても、
「ハワイアンズのおかげで町に活気がある」と、地元から愛される存在となりえているのがわかる。
 いわき市湯本の町は、ハワイアンズの集客力もあって活気がある。
しかし、被災各地に目を向ければ、原発周辺の町々や津波で甚大な被害を受けた宮城、岩手の海沿いの町の完全復興への道は、まだまだ遠い。
 震災後、ピンチに陥ったハワイアンズが歩んだ復活までの道程は、
「危機的な“今”から目を背けず、できることから一歩ずつ、みんなで団結して、最大限の努力をする。
少しずつ、少しずつ、現状を改善し、よくしていく。
そして、感謝の気持ちを忘れない」という思いに導かれている。
このやり方は、すべての組織で通用するのではないか。
 日本の歩むべき道、完全復興への鍵は、ハワイアンズの歩みのなかにあるのかもしれない。

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