2015年7月18日、常磐興産(福島県いわき市)が運営する温泉施設スパリゾートハワイアンズは、
同施設内の流れるプールを改修し、アクアリウムと融合した流れるプール「フィッシュゴーランド」をオープンした。
魚を眺めながら泳げるのが特徴で、海中散歩のような体験ができる。
総工費は3億4000万円。
前例の無い施設をつくることで、東日本大震災後に落ち込んだ来場者数の回復を狙う。

スパリゾートハワイアンズでは震災復興後も津波や原子力発電所の事故などに対する風評により、
これまで主要な顧客層だった家族連れが震災前の8割程度まで落ち込んでいた。
そこで2015年、施設の50周年を機に、子供達に一番人気だった流れるプールを改修。
集客の目玉とした。

コンセプトは「南国の魚たちの海中散歩」。
植栽が配置されていた中央の幅1mという細長いスペースを中心に、5つのアクアリウムを設置した。
海中に見立てたプールを回遊しながら、どこに居ても熱帯魚やサメの泳ぐ水槽を眺めることができる。
水族館のタッチプールなどとは異なる体験ができるのがうりだ。

■水槽デザインを何度も検討

プールにアクアリウムを設置するだけでなく、1周130mの中には起承転結のストーリー性を取り入れ、緩急をつけたのがユニークなポイントだ。
 
始まり(起)は水深60cmの浅瀬を表現したエリア。
そこから少し進んで上部デッキ下の滝をくぐると水深は1mとなり、熱帯魚やサメが泳ぐ海中の世界となっている(承)。
海中エリアには、魚が泳ぐ水槽の下をくぐる海中洞窟などの見どころも設けた。
さらに海底火山をイメージした洞窟でクライマックスを迎え(転)、
ウミガメの産卵シーンを再現した地上の楽園に帰ってくる(結)、という構成だ。

泳ぐ魚の種類から壁面アート、水槽を装飾する擬岩、天井照明に至るまで総合的につくり上げた。
設計を担当した丹青社CS事業部デザイン統括部デザイン6部の那須野純一部長は、

「プールと魚のいる水槽を明確に区切るのではなく、空間全体が海の世界だと感じられるよう、一体的にデザインした」と語る。

アクアリウムと流れるプールの融合には様々な苦心があった。
例えば、水槽のデザインだ。魚そのものを引き立たせるため、水槽内はカラフルな装飾を避ける必要があった。
だがこの施設の場合、水族館や博物館とは異なり、より強いエンターテインメント性が求められることから、空間にはある程度の派手さも必要だった。

そこで水槽内外でデザインの印象が乖離(かいり)しないよう、水槽を覆う擬岩のデザインや色合いについては何度も検討を重ねた。
塗装は水槽内とのバランスを見ながら、ほぼ現地合わせで行ったという。

訪れた人が思わず知人などに話したくなるようなアートも随所に取り入れた。
例えば擬岩の岩肌に刻まれたハワイ古代の象形文字、花火に見えるイソギンチャク、
ウミガメの卵の中に交じったピンポン玉など、様々なモチーフが散りばめられている。

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